To : ダイレクト出版のみんなへ
From : 小川忠洋
ベーシックスには、『真摯さ』という言葉がある。これが一番最初に来てるわけだけど、そもそもこれ、どういう意味か、難しい言葉でもある。ま、基本的には、誠実さとか嘘をつかないとか、もちろんそういう意味はある。だけども、それを『誠実さ』『正直』という言葉にしてないのは、ちょっと自分で考えてほしいって意味もあるんだ。
で、真摯さってのは、ウソつかないとかそういうだけじゃなく、仕事に対して、ひたむきに、真剣に向き合うという意味もあり、その意味合いの方が普段は強いと思う。
個人的におれは、仕事してて一番腹が立つときは、部下が仕事ができない時や、ミスをした時ではない。誰だってミスはするし、能力や技術が未熟な時は、十分な貢献ができない。それは誰にでも当然のこと。でも、そうじゃなくて、やろうと思えばできるのに、その仕事を『真剣に仕事をやってない』のを見た時、正直言って無性に腹が立つ。
どれだけ技能が高くても、どれだけ経験があったとしても、目の前の1つの仕事に対して、いい加減な仕事をあげてくると、めちゃめちゃ腹が立つし、この人に任せてもムダかな、とか、なんなら一緒に仕事をしたくないな、、くらいのレベルまで思う。一方で、どれだけ技術が未熟だったとしても、その人の範囲の中で精一杯やってくる、、、それなら何とも思わないし、いろいろ教えたくもなるし、応援したくもなる。
だって、技能が未熟だって、本人にできる範囲を本人が全力でやって、残りは先輩とか、他のメンバーがカバーしてあげればいい訳だし、仕事ってそういうもんだからね。そして、そういう仕事を続けていれば、その人はきっと何年か後には素晴らしい技術を身につけていい人材に育ってる。間違いない。
何年か経験を積んで、仕事がある程度できるようになったとしても、いい加減な仕事をしてたり、手を抜いてたりしたら、それ以上には伸びない。どんなに簡単な仕事でも、「少しでも前回よりも良くしよう」と思って全力で取り組むこともできるし、「まぁ、いつもやってるからこれくらいでいいだろう」とすることもできる。
だけども、言っておきたいのは、後者のような仕事ぶりだと、何年やったとしても、何回やったとしても、全く成長には繋がらない。当たり前だわ。まさか、何回も同じ事やれば、年数が経過すれば、自動的に技術や能力が伸びると思ってないよね?
筋トレと同じで2キロのダンベルを何回か上げたところで、それ以上の筋力はついていかない。筋力をつけるには、自分がもうしんどい...と思まで負荷をかけないといけない。そして終わった後にはクタクタになって、、そして休息と共に筋肉は増強する。仕事も同じで、「もうしんどい」と思うレベルまで、真剣に一つ一つの仕事に向き合わないと能力や技術も、伸びていかない。
だから仕事に対して真摯じゃない、真摯に向き合ってない人は、残念ながら、何年やろうがたいして成長しない。一方で、一つ一つの仕事に真摯に向き合ってる人間はあっという間に成長していく。同じ時間を過ごしていたとしても、内容が全然違うんだよね。
時間をたくさんやればいいってもんじゃない。量をこなせば成長すると思ってるだろうが、それだけじゃダメだよ。ひとつひとつの仕事に集中して、精一杯やって、工夫して、そして終わった後には、振り返って、何が良かった何がダメだったかを記録する。そして、その経験を次の仕事に生かしていく。そういった繰り返しをしないと、漫然と、何回やっても何年やっても結局同じところにいるだけだからね。
仕事に真摯に向き合えない人、真剣に向き合えない人はある意味、ウチではちょっと可哀想な存在になる。
なぜなら、うちは年功序列じゃなくて、成果主義なので、出来る人にはどんどん重要な仕事が任されていくが、どれだけ年次があっても、能力的に成長してない人には、重要な仕事が任されない。ま、端的に言うと、ぼーっとしてるうちに真剣にやってる後輩にどんどん抜かれていくという事。それに、本人が気づかないで、どんどんどんどん抜かれていく。気が付いた時にはもう何年間も手遅れになってる、、っていうこともある。そして真剣にやることを忘れてしまった人は、仕事の基準が下がってるので、その時の自分で真剣にやってるつもりでも、他の人から見ると、どえらい基準が低いというようなことが起きてしまう、、、
ま、ぶっちゃけ才能のあるなし、地頭の良し悪しなども、もちろんある。けど、結局それも何年間もの積み上げにはかなわない。どれだけ地頭が良くでも、どれだけ才能があっても2年、3年で転々を仕事を変えていたら、何も積み上がらない、本を読んでて、第一章、第二章くらいまで読んだら、他の本に移る、、、なんて事を繰り返してたら、どれだけポテンシャルが良かったとしても、ま、その道で、10年積み上げてきた人間とかには、絶対敵わない。
玉琢かざれば器を成さず
と言う言葉がある。これ、おれが高校生の時に、高校の英語教師に言われて心に残ったてる言葉。その頃、おれは全くと言っていいほど勉強してなかった。でも、ある程度はできたんだと思う。そんな不真面目な生徒だったおれに先生が言ってくれた。「そうか。おれは才能をムダにしてるのか」と、思った。(現実的には才能があったかどうかは疑わしいが、そう言ってくれた言葉が励ましになった)それから、自分を「磨かないとな」と思って英語の勉強だけはしてたのを覚えてる。(志望校が決まるまでは、他の教科は勉強しなかったが、どこ受けるにしても出てくるし、とりあえず英語だけはやっとくか、、、みたいなノリだった)
30年近く前の、先生のチラッと言った一言だが、、、おれの人生に大きく影響を与えてくれた。
自分が「玉」だと思うなら、毎日必死に磨き続けないといけない。
いつになっても、目の前の仕事を前回よりも、良いものにするにはどうすればいいか?ってのに終わりはない。これくらいでいいや、と諦めたらそこで終わり。それは仕事を諦めてるんじゃなくて、自分の人生を諦めてるようなもん。